別館になる場合
ゲストとガイドが別館になる場合【悲報】
FITなどで、お客様が高級ホテルや高級旅館に宿泊の場合、
ガイドは、近くの安宿にされるのが一般的です。
それほど高額なツアーでなくても、参加人数が少なく、
京都での宿泊が繁忙期の土曜日(ホテルが最も高額になる日)に当たってしまう場合、
ガイドは近くの、≪かなり残念な宿≫に離されてしまうこともあります。
団体を引率しているのに別館にされてしまうと、本当に不便です。
ただでさえ、ガイドは出発30分前にはスタンバイしなければならないのに、
朝と夕方、さらに余計な時間と手間が取られ、疲労困憊に拍車がかかり、
怒りと腹立たしさでいっぱい、モチベーションは急低下します。
さらに、お客様からも、ガイドが別館にいることに文句が出ます。
予算の問題があることは分かりますが、これは、ホントにやめていただきたい。
京都では2~3連泊するので、大きなスーツケースも運ばなければならないのですが、
雨降りだと徒歩5分程度のところでも、タクシーに乗ることになります。
たとえ近くといえども、予約していないとタクシーも確実には捕まらない。
ほんと、手間暇かかり、時間も無駄、何一ついいことはありませんが、
ときどき、こういう事態になってしまいます。
不愉快な話ですが、はじめてこのような事態に遭遇すると、
かなりショックを受けますので、予め知っておきましょう。
一般的には、ツアー業務では、ガイドはお客様と同じ宿に泊まります。
ガイドは、朝も出発30分前にはスタンバイできないないといけません。
そこで、朝食は早めに、1人で落ち着いてすませましょう。
関連記事:18. 通訳ガイドとゲストの関係
お客様との食事
食材は説明すること【食事は超重要】
お客様が知らない食材は、説明が必要です。
食材名を、そのまま読んだり、直訳しても意味ありません。
それが、どのようなものか説明しないと分かりません。
たとえば、こんにゃく。コンジャック、とかいっても、誰も分かりません。
かといって、実態を長々と説明すると、かえって得体のしれないものに感じられます。
日本特有の食材などは、ガイド用の教則本的書籍に、色々な説明の例があります。
どんな種類の野菜か、何に似ているか、味はどうで、食感はこう、などとお話します。
説明が難しい食材の場合、栄養面の情報もお伝えします。
「健康にいい!」これは、アドバンテージが高いのです。
ゲストが知らない魚の学名を言っても無意味です。
何に似ているか、何の種類で、いつ採れるもので、どんな特徴があるか。
たとえば、その地域の人が大好き、縁起物であるとか、焼くと特に美味しい、
煮るとどうとか、高級食材であるとか、お話するほうが盛り上がります。
食べる前に写真!
ツアーのお客様は、ほとんど全員といってもいいくらい、
食べる前に、まず写真を撮ります。
この儀式が終わらないと、何を話しても耳に届きません。
説明をする前に、写真撮影の進捗状況を確認しましょう。
ガイドもご飯は食べるよ
朝食以外は、ほとんど、お客様と一緒に同じものを食べることになります(=同席同食)。
食事の時の席割
TLがいる場合は、TLにお任せするほうがスムーズです。
TL無しのツアーでは、私は、お客様にお任せし、早い者勝ち。
好きな座席を確保したければ、先頭にいるようにともアナウンスしています。
ガイドは空いた座席に座ることにしています。
色々なやり方があると思いますので、皆様の意見を聞いてください。
質問攻め対策
さて、お客様と一緒に食べると、質問攻めにあいます。
せっかく日本に来たので、あれもこれも直接聞きたいという好奇心は、誠に結構です。
しかし、いちいち答えていると全く食べられませんので、食物を口に入れてしまう。
そうすると、お話できませんからね!
すると、じ~~っとこちらをみて、「どうして、答えてくれないの?」とくる。
慌てることはありません、お客様は好き勝手に食べ続けているのですから。
こちらは、それを食べてしまってから、
「口に食物が入っているのだから、お話はできないでしょう」と返すだけです。
これを続けても、なおかつ、
「ガイドが食べられない」という状況を全く理解しない人は少なくありません。
日本人的感覚で、そのうち分かるだろう、、、と思うのは甘い妄想です。
状況が厳しすぎる時は、≪わたし、ご飯食べてもいいかしら?≫と言えば、
「もちろんですよ~!」と言ってもらえますが、その後また、
質問攻めが繰り返される:まぁ、そんなもんです。
悪気はないのでしょうが、場合によっては、
聞こえないフリをするとかしないと、本当に食べられません。
それだと、ガイドも静かに食事をいただけます。
そうなると、お客様達が一生懸命に1人分の座席を作ってくれようとします:
お心遣いには感謝し、時間がないので、とにかく食べましょうと促します。
飛沫問題
お食事は会話を楽しむ時間でもありますが、ハデに話をされると、飛沫が飛びます。
それも、いっぱい。。。
2020年、新型コロナ騒ぎで、飛沫問題がずっと問題視されてきましたが、
こんな事態が起こるはるか前から、私達は、飛沫問題に直面していました。
近くの人が大声でお話好きだと、自分のお料理に唾が飛んでくるかもしれない;
知らないうちに、そういうことが起こっているかもしれない・・・というレベルではなく、
あきらかに目の前で、≪私のお皿にツバがいっぱい飛んできた≫ということが発生します。
それを実際に見たからには、とてもじゃないが、食べられません。
それに氣付いて、唾を飛ばした人に、そのことを指摘しようとする人がいたら、
そんなことを言わないよう、ジェスチャーで合図して止めます。
後で、ツバを飛ばした本人のいないところで、今後も言わないよう念を押します。
そんなことを知らない困ったちゃん客は、
「あれ~、どうして食べないの?美味しいのに」と呑気に言いますが、
≪急に、胃が痛くなってしまったから≫とか、
≪無理に食べると太ってしまう≫などと言うほかありません。(⇒涙なくしては語れない)
別途自己負担してまで、お料理を作っていただく時間などありませんから、
このような事態に備えて、必ず、非常食を携行しています。
コンビニに駆け込んで、おむすびなどを買って食べて戻ってくるなどします。
コンビニがない場所での飛沫問題発生に備えて、
非常食の代表であるカロリーメイトなどと飲物を、必ず持参しています。
鍋物問題
ツアー中、一度は、すきやき、しゃぶしゃぶ、などの鍋物の時があります。
一人用の鍋なら問題ありません。
生卵問題についてはこちら:関連記事:25. 食事制限・好き嫌い問題【切実】
すき焼きでも、しゃぶしゃぶでも、老舗の名店なら仲居さんがお世話してくださるので、
私達は、取り分けてくださる分を、有り難くいただけば良いのですが、
そんな名店に行くツアーは、ごく限られています。
多くの場合、居酒屋などで、4人くらいで鍋を囲むことが多いのです。
鍋物の場合、説明しなければ、何をどうしていいか分かりません。
また、お客様はお箸を上手に使うことができません。
お肉が大きすぎて困ると、ナイフとフォークを寄こせと要求します。
しかし、居酒屋あたりには、フォークはあっても、食事用のナイフはないのです。
「こんな大きなお肉、いったい、どうやって食べるのよ?」
「私達、日本人じゃないから、そんなことできない」
つまり、
⇒日本人は、こんな大きなお肉を一氣に口にいれるような下品な人達なのね、
という意味です。
それに対しては、
≪これほど大きなものが、一度に口にはいるワケがないでしょう≫、
≪口の大きさなら、あなたがたのほうがよほど大きいわよ—≫などとは、もちろん言わずに、
≪歯でちぎるのですわよ≫と言うものの、
やったことのないことは、それができません。
「歯でちぎって食べる」ことを知っている人も、できる人も必ずいて、
教えてあげたりするのですが、できない人はできないし、
そもそも、自分の習慣にないことは「ありえない」と固まってしまう人もいます。
その結果、お肉を、”素手で”ちぎって鍋に入れる人が出てきます。
もちろん、その人は、手を洗ったわけではありませんし、
お肉をジカにちぎった結果、その手は脂でベトベトです。
さて、ここで質問です。
「その鍋で調理されたものを、あなたは、食べられますか?」
ガイドが鍋を完全に仕切ることこそが、問題なく食事できる唯一の方法だからです。
じきに、お客様が、ガイド1人にばかり仕事をさせると悪いから、
どうぞたべてください、あとは、自分達がやりますから、、、と
氣を遣って言ってくれるので、お気持ちだけ受け取るのです。
私達は、お箸を使い慣れているので、同じテーブルのお客様に
全面的にお世話しながらでも、食べることはできます。
ちなみに、菜箸や取り箸が提供されないことも多々あります。
その場合は、持ってきてもらいます。
自分のお箸を直接鍋に入れるのは不潔なので、菜箸を使うのです—-と説明すると、
「そっか~、な~るほど!」と言いますが、やるのは最初だけ。
みんな、自分が口を付けたお箸を鍋に入れても平気です。
自分の食材を安全に確保して安心して食べることができ、
ガイドがとっても世話をしてくれたと、印象付けることができます。
新コロ騒ぎをきっかけとして、皆で鍋を囲む方式は、見直してもらいたいものです。
どうしても、鍋物を味わってほしいなら、1人用鍋でお願いしたいですね。
ただ、いつまた、大人数の鍋物が復活するかもわかりません。
その際には、ぜひ参考にしていただきたく思います。
果物がない
富裕層向けの高額ツアーで宿泊するホテルの朝食ビュッフェには、
新鮮な果物も数種類並びますが、お手頃ツアーでは、そうはいきません。
問題は、昼食にも、夕食にも、果物が提供されることは、ほとんどありません。
ちょっと、お口直しになる程度の果物すら、まぁ出てきませんので、
「日本人は果物を食べないのか?」と聞かれますが、そんなことはない。
市場見学が入っていれば、新鮮な果物がふんだんに売られている現場をみて、
「なんで、自分達の食事には果物が全然出てこないのか?」と文句を言われます。
お気持ちはよ~く分かるのですが、これは、ガイドの管轄ではありません。
メニューは誰が考えているのか、と聞かれることがずいぶんあり、
ツアー担当者に尋ねたら、基本は、現地のツアー企画旅行社の指示なのだそうです。
果物がないと言われたら、スーパーなどが近ければ買っておくようお薦めします。
市場見学があるときも、果物をお買い上げする良い機会です。
デザートはある?
あるランク以上のツアーなら問題ありませんが、
お手頃価格のツアーでは、デザートが付いていないことが頻繁に発生します。
欧米のゲストにとってデザート無しの食事は、納得ができないのです。
どのガイドも、1品減らしてもデザートは付けるよう提案していますが、
実現は難しく、また実現しても、どこへ行ってもアイスクリームばっかり続く、
ということもあり、デザート問題は、なかなか解決しない難関です。
ゲストはやはり、「日本人はデザートを食べないのか?」と聞いてきます。
そんなことはないのですが、納得させるには、健康問題にしてしまうことです。
日本では、3時のオヤツがとても大事な時間。
職場でも、3時には一旦手を休めて、お菓子とお茶をいただくことが多い。
夕食までのつなぎという意味もある。
お菓子はカロリーが高いので、夕食後に食べると太る。
最近は、メタボのような成人病も増えているため、健康維持の面からも、
高カロリーのお菓子やケーキなどを夕食後に食べるのは、健康に悪い。
そういうものは、3時におやつの時間に食べるのです。
午前中10時もお茶の時間で、お菓子はおやつ時間に食べる習慣があるとお伝えしています。
伝統的な日本のおやつは、お餅系、お団子系と、お腹に持つものが多いので、
食後だと食べきれないから、という説明などはいかがでしょうか。
欧米のお客様がイメージするお菓子(ケーキ)は、
生クリームやチョコレートなどをいっぱい使っているけれど、
お腹には持たない、カロリーだけが高いものが多い感じがします。
次回は、御朱印、お賽銭について、少しコメントします。
その次は、やっと最終回。ガイドの前泊についての情報をお話して、
オペレーションのシリーズを一旦終わりにする予定です。
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