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II-39. 【新人】通訳ガイドの動線ナビ:奈良【日本初の世界遺産・法隆寺】

動線Navi

法隆寺までのアクセス

団体ツアーで法隆寺へ行く場合、
専用バス移動が標準です。
奈良で公共交通機関を利用するような
格安ツアーは、法隆寺へは行きません。
法隆寺が奈良市内から離れているため
移動に時間がかかることと、
拝観料が日本の神社仏閣のなかでも
トップクラス、お1人様1500円
という価格設定だからです。
広く浅く多くの場所を訪れることを
ウリにして集客する格安ツアーの
対象になる場所ではありません。

法隆寺近くのバス駐車場

斑鳩町立法隆寺観光自動車駐車場
駐車場内にお手洗いあり。
敷地内にに、法隆寺iセンター
法隆寺iセンター内にもお手洗いがありますし、
法隆寺や斑鳩の観光情報があります。
下見の際にも上手に利用しましょう。

法隆寺見学時間と夢殿問題

コロナ禍以後、団体ツアーの行程も、
時間にゆとりをもたせる方向で検討
されるように聞いていましたが、
ただの、ウワサだったようです💦
ここでは、これまでのツアーの
標準的な行程を基準にお話をします。

法隆寺は、駐車場から出発して、
標準ルートを見学してくると、

約2キロ歩くことになります。
このことは、前日にはご案内しておき、
当日も重ねてご案内します
法隆寺へ行くツアーは、
富裕層向けの案件が多いため、
高齢者、足腰の悪い人の割合も多めです。
ゆっくり歩くなら頑張るという人、
その時の体調次第で、
途中まで見てバスに戻る人、
そんなに歩くなら、諦めて、
バスの中で休みたい人など、いろいろです。
実際は、ドライバー様がバスを離れると、
ずっとバスの中にはいられませんので、
近隣のカフェなどで時間潰しを
することになります。
その場合、上記の法隆寺iセンターも
活用させていただくにしても、
2時間ずっと粘るわけにもいきません。

法隆寺見学時間の標準は、約 2時間
駐車場からの往復を含めると、ギリギリ!
1時間半しか時間のない行程の場合、
夢殿へは行けません

【1時間半を2時間にするには?】
法隆寺の前の訪問場所を、
できるだけ早く出発し、
予定より30分早く法隆寺駐車場に
到着できれば、夢殿まで行けます。
場合によっては、後の行程も
少しだけ短くするなどすれば、
1時間半を2時間にすることが
できる場合があります!

法隆寺まで行って夢殿を見ない、
日本人なら考えられない展開ですよね

例によって、行程の詳細は、
ランドオペレターである日本側の旅行社と
現地旅行会社との契約内容を、
ツアー事前打合せで確認する必要があります。
さすがに、法隆寺拝観に1時間半しか
時間をとっていない行程では、
最初から「夢殿なし」が、
前提になっている場合もありますが、

ゲストからのクレームが出ることを前提に、
対策が必要です

はるばる日本まで来て、
せっかくここまで辿り着いたのに、
「夢殿へ行かないの???」という落胆は、
察するに余りあります。
夢殿を見て感動するか否かの問題ではありません。

後程書きますが、
法隆寺の拝観券は3つの部分があり、
夢殿に行かないと、3つ目が残り、
「なんでここに行かないの?」と
聞かれること必定(@_@。
実際に、感動するかどうかはさておき、
【有名】であるのに行かない・・・
それが問題なのです。
また、富裕層向けツアー団体の中には、
予習をしてくる人が数名はいますので、
【見所を逃した】となると困るわけです。

【確認事項】
・夢殿は行かなければならないか?
・時間不足で夢殿へ行けない場合はどうするか?
・ゲストにはそれを、どう説明するのか?

法隆寺へ行く行程のいろいろ

一般的な団体での奈良観光は、
京都のホテルに滞在したまま、
日帰りすることが多いとお話しました。
一方、法隆寺は、奈良市内から、
バスで40~45分かかるため、
往復だけでも2時間弱かかります。
必ずしも、奈良市内から往復して
訪問するとは限りません。
奈良市内との往復を避け、
効率化された行程が多い印象です。

たとえば、高野山を朝に出発して法隆寺拝観、
その後奈良市内でランチの後、
東大寺~春日大社~京都のホテル、
というルート、
もちろん、その逆もあります。
高野山は前日に見学が終わっていれば、
宿坊を予定よりも早く出発すれば、
法隆寺見学に時間の余裕ができます。

【注意事項】
行程管理は厳重になっています。
旅行社が決めた時間より早く出発する場合、
事前にツアー担当者の了解をとり、
バス会社経由でドライバー様に連絡が必要。
10分や15分程度なら、
皆様ご対応くださいますが、
予め変更を決める場合は、
事前に連絡しておくべきです。

夢殿へ行けない場合

法隆寺到着前までに、
ガイディングを済ませます。
その際に、旅行社と打合せした内容と
事情を説明して、
夢殿へは行かない(行けない)理由を、
事前にお伝えしておくべきです。

行けないと思うけれど、
場合によっては行けるかもしれない、
現場の状況次第で決めることを、
予めご了解いただきたい、

というケースもあり得ます。

筆者は何度かこのセリフを言い、
毎回夢殿まで制覇しています。
もちろん1時間半では無理です。
細かいことはさておき、
大きなポイントを強調して、
ゆっくり早めに進むことが肝心です。

法隆寺

法隆寺は、世界最古の木造建築であり、
姫路城とともに、
日本初のユネスコ世界遺産登録場所です。
訪日ゲストの関心事は、
どこへいっても歴史の長
さです。
木造建築が1400年間
受け継がれてきた歴史

思いを馳せるのですから、
じっくりと見学したい場所です。

駐車場から法隆寺南大門へ移動

Google Mapが分かりやすいのでご参照ください。
駐車場から南大門まで300m少しあります。

南大門~チケット売場まで

ガイドは、すぐに南大門下まで
行って説明をしないこと。
ゲストが写真をとる邪魔をしてはいけません
写真撮影がおさまってから説明に入ります。

南大門から先は、いつ訪れても
静謐な空気が流れています。
直進して中門まで行き、
約4メートルの金剛力士像を間近に拝見。
左方向入口から入り、チケットを買います。
ゲストの言語のパンフレットをいただけます。
パンフとチケットをゲストに配りますが、

チケットは3回必要なので、
失くさないこと。
1.五重塔や金堂がある西院伽藍
2.大宝蔵院(収蔵館)
3.夢殿

夢殿へ行かない場合は3回目は
必要ありませんが、
「なんで3回目が必要ないの?」と
聞かれることになり、
「え・・・3つ目を見ないの?なんで?」と
かなり微妙なことになってしまいます。

チケット売場近辺では、
団体の統制がとれていないと怒られます。

係員が誘導した場所へ移動せざるをえず、
まずは、そこで概要を説明します。
ガイドが思う場所へ
自由には移動できない雰囲気なのです。

西院伽藍

五重塔

インバウンドゲストが興味を持ってしまうのは、
何といっても、何度見ても、どうしても五重塔。
これは日本最古の五重塔:高さ31.5m
⇒珍しく最下層の内陣が公開されている。
建築上のポイントは現場でガイディング。

ガイドが説明する前から、
「お釈迦様入滅の場面はどれか?」
と聞いてくるゲストが時々います。
こういうタイプの方は、かなり予習していますから、
特に新人ガイドは、頑張りましょう。
お釈迦様がニルヴァナに入る場面は、
北面ですよ

北面とは、つまり大講堂側です。

金堂

世界最古の木造建築である金堂
法隆寺では、ここがスーパースターです。
堂内写真撮影禁止!!!

東回廊側から回り込んだ所の入口から入り
一方通行で、五重塔に面した出口から出る。
中は薄暗いので人とぶつかったりしないよう、
また、足元にも注意。
堂内のスーパースターは、釈迦三尊像。
ゲストには分かりにくいので、
ガイドがその場所にスタンバイして、
漏れなく全員にご案内をします。
静かにするよう注意していただきます。
イヤホンガイドを使えば、大丈夫。

大講堂

灯籠を通過して大講堂へ。
向かって左側から入ります。
内部を静かにご案内。
御本尊様の薬師如来坐像、
日光菩薩、月光菩薩、
四天王立像は、ガイディング必須。
ポイントだけでOK。
堂内を移動すると、小さな売店があり、
絵葉書や書籍を販売しています。
そこに、法隆寺が出版している
「法隆寺」という書籍があり、
筆者はそれをすべて参考にしています。
有名な神社仏閣については、
色々な書籍が山ほどありますが、基本的には、
御本家の情報とデータを優先しています。

「法隆寺」これ1冊でOKですが、
日本語版しかありません。
これを基に自分用の原稿を構成し、
担当言語に訳して
【永久保存版のベース】を作り
データや情報に応じて、
マイナーチェンジ
して調整します。

この小さな売店に向かって
左側に進むと開口部があり、
庭の向こうに上御堂を見渡せます。
この庭には、四季咲の桜
植えられていますので、
運がよければ秋でも
桜が咲いていることもあります。

大講堂から回廊へ抜けます。
金堂を別な角度から見たり、
回廊のエンタシスの柱についてもお話します。
回廊を抜け、外に出ます。

聖霊院

鏡池のほとりには、正岡子規の
「柿食えば、鐘がなるなり 法隆寺」の
句碑がありますが、
外国人ゲストはスルーでOKでしょう。
「柿」を知らない人も沢山いますから。。。

聖霊院に入るには、靴を脱ぎます
それでも入る人、
それなら外で待ってる人といろいろ。
中では静かにするようご案内しますよ。

法隆寺についてのガイディングでは、
必然的に、聖徳太子についても
多くを語ることになります。

ずば抜けた頭脳の持主であったと分かると、
あやかりたい人は、必ず入りたがります。
子供や孫がよく勉強するように
お守りを買いたい人もいます。
中に入らない人は、
池の写真などを撮っています。
全員集合したら一か所にまとめ、
1列になってもらいましょう。

大宝蔵院【2度目の検札】

1列になって2度目の検札を通過;
ここは大宝蔵院入場用の検札。
綺麗に1列に整列していないと怒られます
右手に、高床式の宝物庫、
その先の食堂前を通過して直進、
大宝蔵院へ進みます。

大宝蔵院とは収蔵庫兼ミュージアムで、
内部は一方通行
入口と相対する場所に出口があります。
先に出てしまった人は、
そこで待つよう入場前にご案内。
内部では静かにすること。
ひとつひとつ丁寧に見ていると、
いくら時間があっても足りません。

【必見作品】
夢違観音:入ってすぐのガラスケースの中
・その周辺の国宝級の像をさらっと
・中ほど奥にある「玉虫の厨子」
・その左隣の「聖徳太子コーナー」
17条憲法版木:日本最古の憲法。
・百済観音堂:スーパースター百済観音様
身長209cm、ほぼ8頭身。
門外不出だったのに1997年に渡仏。

故シラク大統領が、この百済観音像を
フランスに招きたいという夢を叶え、

フランスにおける日本年の目玉企画
としてルーブル美術館に展示された。

・伝橘夫人念持仏および厨子、など
百萬塔世界最古の印刷物
グーテンベルクよりもはるかに古い印刷!

他にも色々ありますが時間に応じて適宜。
このような博物館では、どうしても
バラけてしまいますが、
重要展示は漏れなくご案内すること。

・夢違観音は問題なく全員にご案内可能。
・玉虫の厨子は、インパクトが強いので、
ゲストがガイドの説明を待っています。
・聖徳太子コーナーはそのすぐ横なので、
引続き説明に持ち込む。
・百済観音像は、ルーブルに展示された
といえば注意して見ます。
・最後の締めは、東宝蔵出口にある百萬塔。
ここにスタンバイしていて
通過するゲスト全員に説明する。

百萬塔の詳細は、全部を語ると
わかりにくいのでポイントだけ。
あの中には、世界最古の印刷物が
入っている
ことをご案内。

休憩とお手洗い

大宝蔵院を出て進むと、
自動的にお手洗いと休憩場所に出ます。
日差しが強ければ、
少しの時間でも休憩小屋に入るなり、
それほどでもなければ、
外のベンチに腰掛けたりしつつ、
お手洗いの人達が終わるのを待ちます。
全員集合したら、再出発。
西院伽藍の大通りへ出たら左へ向かいます。
ここから夢殿まで5分と案内には出ていますが、
団体では、とてもそうはいきません。

夢殿【3度目の検札】

東大門を抜け夢殿方面へ直進。
途中に、お土産屋さんの屋台が並んでいます。
ゲストがお買物をしてくれるのは良いけれど、
時間ギリギリの場合、
ゲストが悩んでいるなら、申し訳ないけれど、
諦めてもらう傾向にはあります。
「これを買う」と決めてる場合は、
すぐに済みますが、皆を待たせてまで、
1人2人にお付合いするわけにもいきません。

四脚門がみえ「夢殿」の表示が見えて来たら
ストップし、チケットを用意してもらいます。
この門をくぐる瞬間に検札があるからです。

夢殿の建築全体は見渡せませんが、
ゲストは、全体の雰囲気を堪能するようです。
桜の季節に訪れると、夢のように美しく、
色々なアングルから様々な写真をとって
楽しんでいます。
肝心の聖徳太子実物大の仏像は、
なかなか拝見できませんが、
それは全く問題ではありません。

夢殿とその周辺を一回りしたら、
鐘楼の前を通って四脚門から出ます。
四脚門を背にして左側にお手洗いがありますので、
急ぐ人はそちらへ、急がない人は駐車場のお手洗いへ。
あとは、元来た道を駐車場へ向けて戻ります。

法隆寺拝観のまとめ

坂道も階段もなく平坦なところばかりなので、
2km歩いても氣にならないように感じますが、
バスが出発すると、
寝てしまうゲストもけっこういます。
ガイドの問題は、見学の時間配分です。
駐車場から法隆寺までの間、
ゲストが興味を引くお店はないので、
移動はスムーズです。

下見全般について(ここに限らず)

下見の際には、団体を引率しているスピードで歩き、
要所要所での写真タイムも加味しながら
全体の時間配分の目安をつけます。

このブログでは、ガイディングは、
すべて割愛していますが、実際は、
要所要所で説明をしながら進むわけです。
それぞれ、どこで、どのような説明をするか、
松竹梅とゲストの興味に応じた
説明内容を準備しておきましょう。

松竹梅と明確に区別するのも、
イカガなものかと思いますが、
実際、日本の歴史や文化には
それほど興味はなくて、
変わった風景の写真さえ撮れればいいという
人達の団体もたくさんあります。
その場合、詳しい説明は必要ありません。
そもそも、説明など上の空ですが、
クレームになると困りますから、
必要最低限の情報は、誰も聞いていなくても、
必ずご案内しなければいけません。
それが「梅」コースです。

稀に、日本の歴史や文化のヲタクが
紛れ込んでいます。
その場合は、松コースで対応し、
最上級のガイディングをします。

*** *** ***
高野山~法隆寺~ランチ~東大寺~
春日大社~京都のホテルという行程、
その逆もあるでしょう。
次は、奈良市中心のハイライトです。

II-40. 【新人】通訳ガイドの動線ナビ:奈良【アクセス・東大寺駐車場問題】

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