公共交通機関利用【電車・地下鉄】
公共交通利用日の心構え
どんな高額ツアーでも、ほぼ必ず、
公共交通利用日が組み込まれています。
大義名分としては、現地の人達の生活を
身近に感じることができるから。
最大の理由は、バスを貸切るよりも、
圧倒的に安いからです、
JR・地下鉄・都バスが乗り放題の1日券でも、
1600円程度なのですから。
貸切バスがあっても1日に1万歩はデフォルト、
その程度なら何の問題もありません。
バスがあれば、目的地で降りて見学し、
バスに戻れば、必ず座ることができます。
ゲストがお買物をしても、
バスに残したまま見学を続けられます。
ガイディングも注意事項も、
全部バスの中で安心して説明できます。
しかし、公共交通利用の場合、
下手すると1日中、立ちっぱなし。
ガイドの持つ最低限の持ち物だけでも、
かなり重く肩に食い込んできます。
その荷物を持ったまま歩き続け、立ち続け、
脚は棒のようになり、
疲労困憊度合いは表現しがたく、
翌日になっても、その疲れは取れません。
ゲストも、途中の買物で荷物が増えて、
持ったまま歩くことになるため、
忘れ物をする確率も高まり、
「なんで、バスがないんだ」と言い出す始末。
⇒行程がそうだから、なのですが。。。
公共交通利用日に雨が降ろうものなら、
足元は悪く、写真も綺麗に撮れず、
一斉に不機嫌になることもあります。
疲れすぎて怪我をする人が出やすい。
公共交通機関利用のオペレーション
公共交通利用日の行程も、
やはり時間はギリギリです。
集団の移動に必要な時間は、
けして計算されないからです。
大体、ガイドが歩く時間の3倍は必要です。
早く到着できればそれに越したことなし。
団体でホテルから駅までゾロゾロと、
しかも安全を守らせながら移動。
到着したら人数確認を毎回繰り返すので、
かなり余計な時間がかかります。
1日乗車券がある場合
最初の駅に到着した時、
人数確認を兼ねて配る。
やり方は色々あります。
1日乗車券は終日使うので、
絶対に無くさないこと。
無くしたら、ゲストの自己負担で
買ってもらうことになること。
⇒これらの注意事項は、
公共交通機関利用の前日に1回目ご案内、
当日ホテル出発前に2回目ご案内、
乗車直前に3回目の注意喚起します。
「聞いてなかった」
「聞こえなかった」
「ガイドがちゃんと説明しなかった」
などの言い訳は、完全に阻止すべし!
実際に1日乗車券を失くしてしまって、
自分で買う必要に迫られると、
ホントは自己負担することを知りながら、
トボける人が稀にいますので、
事前に繰り返し、注意喚起が必要です。
ソフトに、しかし、キッパリと。
現金で人数分の切符を買う場合【回数券利用】
JRの回数券なら、10枚分の料金で11枚分、
ゆりかもめの回数券なら、
10枚分の料金で12枚分を買えます。
事前に、回数券で買う枚数と、
個札で買う枚数を確認しておきます。
領収書を忘れないこと。
都内のJRや地下鉄に関しては、
領収書は不要な場合が多いですが、
可能な限り領収書を受け取る【クセ】を付けること。
出費が同じ金額ならどうする?
たとえば、全部で10人分の切符を買う場合、
個札でも回数券でも金額は同じですが、
私は回数券を買い、
残り1枚は、精算書と一緒に返却します。
だいたい、使用期限は3か月ですから、
FITとか何かに使うことができるでしょう。
実際に、旅行社がそのような切符を、
どう処理しているかは分かりませんが、
無駄にすることはありません。
違う切符をみたゲストの反応
個札と回数券では、
大きさもデザインも違いますので、
「なんで違う?」と話題になります。
そのまま正直にお話していますよ。
すると、ごく素直に、
「そうね、節約は大事」と納得してくれます。
駅の改札
駅の改札は、IC専用と、切符を通せる改札があり、
お客様には見分けにくいので指示します。
切符を持ち帰りたい人
「切符を記念に持ち帰りたい」人がいるかどうか、
改札を出る前に希望者を確認します。
切符が不要な人は、普通に改札から出てもらう。
切符持ち帰り組は、有人改札へ誘導し、
ガイドが先頭に立って、
「お客様が切符を記念に持ち帰りたいので、
無効印をお願いします」とお願いし、
ハンコを押してもらったり、
パンチで穴をあけてもらうなどして、
全員集合を待ちます。
【注意】ハンコの場合、すぐ触ると、
インクで手が汚れると注意してあげること。
切符の確認
旅行会社渡された切符や1日乗車券を確認
- 利用日の日付が合っているか
- 枚数と人数が一致しているか
施設見学の場合、全国通訳案内士は、
無料になることがほとんどなので、
クーポン等には、
お客様の人数だけが記されていますが、
電車はガイドの分も必要です!
1日乗車券
1日乗車券には、JRだけ、地下鉄だけ、
JRと地下鉄と両方乗れるものなど何種類かあり、
ツアーや行程によって決められています。
地下鉄の1日乗車券
上に、JRと地下鉄も乗り放題の1日乗車券が、
1600円程度と書きましたが、それでも、
予算的に、地下鉄の1日乗車券しか
設定されないツアーもあります。
予算のために、無駄な乗換をして
遠回りをするなんて、アホらしい。
予算はもちろん大事な要因ですが、
1人分、140~200円の話なのです。
時には、JRなら140円で行ける区間を、
地下通路を延々と歩いて乗換して一旦遠くまで行き、
さらに乗換して手前の駅まで移動するなど、
「あほちゃいまんの」。
観光に来ているのに、地下鉄利用だけなら、
外の景色はまったく見えません。
百歩譲って、行程的に、
地下鉄の1日乗車券で効率よく回れるのなら、
ゲストが外の景色を楽しめなくても、
致し方ありません。
しかし、どう考えても、
山手線や中央線などJRを利用したほうが、
効率的と思われる場合には、
ツアー担当者と交渉しましょう。
1人140円の追加予算で、
顧客満足度が飛躍的に上がる可能性が高いのです。
最終行程を見て、念入りにルート設計を、
シミュレーションを考えます。
順番は入れ替えてもOKですが、
ツアー担当者には事前にお伝えします。
1日の予算だけ決められる場合
具体的な指示はなく、
1日の予算だけ決められる場合もあります。
その場合も、早急にシミュレーションをして、
1人分の交通費を計算します。
順番は、各ガイドが最も効率的と思う順番に
変更してもいいのですが、
当日、予想外に雨が降りだした場合など、
突然ルートを変えることもありますので、
第1希望と、第2希望と、2つの可能性を考え、
高くつく方の予算を目安にします。
費用は安いに越したことはありませんが、
効率と、ゲスト満足度を優先しましょう。
余計にかかる時間も含めたルート設定
大江戸線のように、新しい地下鉄ほど、
乗場まで非常に遠くなります。
団体でゾロゾロと地下深くまでもぐり、
乗換の通路を延々と歩いて移動するので、
それだけでも、かなり余計な時間がかかります。
この余計にかかる時間は、
けして行程には考慮されていません。
毎回、駅到着時、電車に乗る前、
降りたあと、人数確認をするだけでも、
さらに時間がかかりますので、
それも含めたルートを計算・設定します。
移動時の注意
大人数での公共交通機関は、
毎回神経をすり減らします。
駅の改札
ホームで乗車前
乗車後の電車内
降車後のホーム
毎回の全員点呼には時間もかかり、
お客様から「毎回うっとうしい」、
と言われることもありますが、
全員無事の確認は必須です。
山手線や地下鉄などでは、
数か所から分かれて乗車、
降車しないと間に合いません。
乗車前に、何番目の何と言う駅で
降りるかをご案内しますが、
そんなことを氣にするのは、
ごく一部のゲストさん達だけで、
あとは、ガイドを見ています。
分かれて乗りこんでも、
車内ではできるだけ近くにまとまること。
到着の2つ前の駅でご案内、
1つ前では必ず全員に、
「次、降りるよ!」とご案内します。
大声を出すことはできませんし、
車内も煩いので、近くにいる人から、
方々に伝えていただけるようお願いします。
大丈夫だろうと思いこんで、
迷子を出してしまったガイドもいるそうで、
そうなると、団体全員からの信用を失い、
クレームにもなります。
問題は、「思い込む」のではなく、
全員安全の無事を、必ず確認すること。
ラッシュアワーの団体移動
公共交通利用日は、
最寄駅出発が9時頃の設定が多いのです。
多くのオフィスは、9時始まりなので、
ラッシュアワーのピークは、
いちおう、過ぎているという設定。
もし、9時前の混雑時間帯に、
移動を余儀なくされる場合は、
若干遠回りになっても、
人が少なそうな路線を選ぶのも一つの方法です。
どっちみに、ラッシュアワーでは、
外の景色など楽しめませんから、
いかに迷子を出さないか、
これに全力で取り組みます。
9時過ぎでも電車内は混雑しており、
すぐ来た電車に乗れないこともあります。
夕方はもう、
「ニッポンのラッシュアワー」そのもので、
念には念を入れて、全員に注意喚起して、
ご協力をお願いするほかありません。
ルート設定は、
朝と夕方の各路線の上り下りの混雑具合も含め、
効率的かつ迷子になりにくい順番を考えます。
【公共交通利用日の前日に、
全員で真面目にブリーフィングして伝えること】
- 毎回、ガイドが指示を出すので、
常にガイドのほうを見ていること。 - 現場は煩くて声も届かないので、
一致協力し、近くの人から伝えてもらうこと。 - ホームでは、必ず線に沿って並ぶこと。
⇒並ばないと、乗れない!!! - ガイドが「この電車に乗る!」と
合図を出したら、それに乗る。 - 万が一、乗れなかった場合どうするか、
事前に全員と打合せをしておく。 - 電車から降りるときも、
全員で声を掛け合う。
SOSカードで対応する。
⇒とは言うものの、電車に乗れなかった、
取り残された、降りなかったなどの
トラブルが起こると、催行が止まり、
全員に多大な迷惑がかかります。
ガイド棒使用の注意
駅のホームでは、安全上、
ガイド棒の仕様は控えましょう。
基本、駅構内でのガイド棒は使用禁止。
筆者も、駅員さんから、くれぐれも周囲に
氣を付けるよう注意されたことがあります。
一般の利用客も多いので、
万が一ぶつかったりすると大変ですし、
運転士さんの業務妨害にもなるそうです。
「この電車に乗る!」と合図をする時なら、
周囲に充分に氣を付ければ、
一時的に上手に使うこともできます。
ホームではなく駅構内を歩くときは、
周囲に気を付け垂直に持って、
団体を誘導します。
ゆりかもめの場合
新橋からお台場へ向かう場合なら、
1本電車を遅らせても最前列を確保します。
特定の人達が最前列の席を独占しないよう、
順番に代わってもらうようにとか、
後ろの人の邪魔にならないよう、
前の人は姿勢を低くして協力してもらいます。
FITの場合は、ぜひ、最前列に乗せましょう。
路線バス
京都市内で公共交通利用と言われれば、
地下鉄と路線バスの2本立てになるでしょう。
京都では、路線によっては、
各停留所に停車しない
<急行>バスもあるので要注意です。
東京都内観光の場合、
バスの利用は、普通考えられていません。
時間が読めませんし、
渋滞に巻き込まれれば、
行程に支障をきたすからです。
また、大人数で都バスに乗ったら、
迷惑以外の何ものでもありませんし、
迷子などのトラブルも出やすくなります。
団体の人数が20人程度を限度とし、
行程次第ですが、私は、出来る限り、
1度は都バスに乗れるようルート設定をします。
もちろん、時間帯にもよりますが。
たとえば、築地から東京駅は、
都バスの路線も本数も多いので、
さほど問題ありませんし、
東京駅は終点ですから、
降りるのに焦る必要もありません。
歌舞伎座~銀座を通るので、
比較的すいている時間帯ならオススメです。
あと、新橋駅から六本木へ行く時も、
本数が多く使いやすい路線です。
路線バスは、電車とは違う現地密着感があり、
お客様にはとても好評です。
次回は、公共交通機関、
長距離列車の場合について、お話します。
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