困った状況での対応問題
「通訳案内の現場で必要となる知識等に関する外国語訳及び全国通訳案内士として
求められる対応に関する質疑」の後半部分ですが、長いので「困った状況対応問題」とします。
通訳問題が終わると、1枚の紙を渡されます。
いま、直面している状況<シチュエーション>と、
それに対応する<条件>が書かれています。
今後、参考書などで学習する際、
<シチュエーション><条件>の使い方を覚えてください。
2019年、筆者に渡された問題
<シチュエーション>
新幹線で移動中、地震が発生して新幹線が止まってしまいました。
アナウンスは日本語だけでお客様は意味が分かりません。
そして、とても怖がっています。あなたは、どう対応しますか?
<条件>
あなたは個人のお客様をご案内中で、特にその後の予定に制限はありません。
この紙を渡され、
<シチュエーション><条件>を読みきらないうちに対応説明を求められてしまいました。
対応などを考える時間などありませんでした。
どうやら、前の時間帯の試験終了が遅れ、
時間が押して制限時間が切羽詰まっていたようでした。
そのような事態も想定しておきましょう。
日本人試験官から、外国人試験官をお客様と思って話すよう言われました。
確かに、「この方をお客様と想定して話してください」と言われたのに忘れて、
日本人試験官を見ていたのでした。
本当の通訳ガイドとして演じることがいかに大事か、これでよく分かります。
質疑応答
最初から質疑応答があるのではなく、「説明をはじめてください」と言われました。
<シチュエーション>に応じて、次のように話を切り出しました。
わたし:まず、アナウンスが日本語だけなので、内容を通訳してお伝えし、次の案内を待ちます。
客(試験官):地震なんて経験したことがないから、怖いですよ~。どうすればいいの?
わたし:日本の新幹線は安全だから大丈夫、安心してください。
「いま何がどうなっているのか」を説明したうえで、
お客様を安心させることが、ガイディングの基本です。
根拠もないことをテキトーに言うという意味ではありません。
本当に危ない事態ならば、説明などする暇もなく、
早速逃げなければならないこともあるでしょう。
ここは、新幹線の中という想定ですから、このように答えました。
客:これから京都へ行き夕方には到着しないといけないのに、遅れてしまうよ~!!
時計を見ながら遅れたら困っちゃうという雰囲気を醸し出してきました。
騙されてはいけません!
わたし:何よりも大事なのは、あなたの安全です。
まず、エージェントに電話して指示を聞きますね。
まずエージェントに連絡して現状を説明し指示を仰ぐことが、通訳ガイドの鉄則。
行程変更に関わる問題はすべてエージェントに連絡し、指示を仰ぎます。
上のように答えたら、日本人試験官は、すかさず何かをメモし、
外国人試験官も頷いて何かをメモしました。
これが、試験前の失敗や、苦し紛れのプレゼンテーションの挽回に繋がった
ポイントの1つめと思われます。
客:いつまで止まっているのでしょう?
わたし:たぶん、20~30分は動かないでしょう。次のアナウンスを待ちましょう。
新幹線が遅れたら、特急料金を払い戻ししてもらえます。
自分でも何か変だと思っていましたが試験終了後に氣がつきました。
緊張して意識が飛んでしまっていたのでしょう。
ですから、この答えは不正確です。
実際、日本人試験官は笑っていたので、この間違いに氣付いていたと思われます。
こまった時間をいかに明るい時間にしていくアイディアがあるか、
それが問われる問題かと思われます。
・現在いる駅周辺の地理や歴史を語る
・一緒に折紙をする
・持参した写真やグラフなどの資料を見せる
・FITならお客様が特に知りたい話題について詳しく説明する
・昔話を語るとか
あらゆる機会を有益なガイディングに転換するアイディアを出すことがポイントです。
実際、この情報は不正確でしたが、前向きな内容を提示してお客様を明るくさせる、
ということでは成功したといえます。(ホントの業務だと問題でしたが。。。)
客:え~、払い戻してもらえんの!!!あ、そう!!知らなかったよ。
試験官は笑いが止まらなくなってしまいました。
それにつられて、私も笑いが止まらなくなってしまいました。
あとで、特急料金の払戻しは「2時間以上」と分ればガッカリされることでしょう。
申し訳ないことでした。
わたし:いつ京都に到着できるかわかりませんが、京都駅に着いたら、特急料金の払い戻しに行きましょう。それも悪くないでしょう。
客:それは、いい考えです!
試験官はまだ笑いが止まらない。
イイことを知ったと思ったことでしょうね。
試験官さん、ごめんなさい、お詫びいたします。
わたし:これまで新幹線の事故は起こっていません。
わたし:2011年の東日本地震の時は、地震発生前に新幹線が止まりました。
ですから、日本の新幹線は安全なので大丈夫です。
ここでも、試験官は何かをメモしていました。
できる限り、日本のアドバンテージを示し、
訪日外国人客に、それらをお勧めする内容を盛り込むようにします。
これが、前半の挽回に繋がった2つめのポイントではないかと思います。
—おひらき—
終わったあとも、特急料金払戻しの件で、外国人試験官さんは、笑いが止まりませんでした。
まぁ、楽しい時間を過ごすことができたので、ダメでも来て良かったと思えたのでした。
払い戻しの件といい、苦し紛れの展開になってしまいましたが、
目標は試験合格であって、不足分は合格後に補充すればいいのです。
試験前に失敗し、プレゼンテーションは、無理矢理続けただけのビミョウさでしたが、
現役の通訳ガイドとして重要ポイントは分かりますから、それが大いに役立ちました。
試験終了後
試験が終了したら、お礼とご挨拶をして、忘れ物がないように退出します。
日本人としては、そのままクルリと背を向けて出口へ向かうのではなく、
試験官を見ながら、三歩後ずさりをしてから方向転換をします。
これは何もガイド試験専用ではなく、社会人としての常識ですね。
分かりやすい例を挙げると、国会議員が議場に入る時、
入口で一礼し、出る時は正面を見て一礼してから出ます。
議事堂に限らず、日本人としての常識です。
廊下で、係員が数人ずつ試験後の控室に誘導します。
そこで、同じ時間帯の人達の試験がすべて終わるまで待ち、
最後の人が戻ったら、迷路のような廊下を、出口まで案内されるのでした。
次回は、困った状況の内容について、少し解説します。
【通訳案内士 2次試験対策-8】求められる対応【困った状況の種類】
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